こんにちは!
住宅メーカーに勤める一級建築士ブロガーとして、スタートしたつもりのブログなのですが気づけば他の事ばかりに、、
重い腰を持ち上げ本職にかかわる記事を書いていこうと思います(笑)
・水害に強い土地の探し方がわかる
・住宅購入のエリアを絞るのに役立てる
・購入を検討している住宅があるが、土地がそこで本当に良いのか心配
目次
住宅購入で考えるべき水害のリスク
液状化・氾濫・波浪・高潮・津波とたくさんの種類がある水害ですが、これらがもたらす不動産への影響を見ていきましょう。
浸水
突然、愛着のある我が家を出ることになってしまったり、そこまではいかなくても浸水したら 汚泥の除去や消毒、腐食した材の交換などをすると相当なお金がかかってしまいます。
コストは個人の保険や被害状況によって様々ですが、0円というわけにはいかないでしょう。
保険に入っていた場合でも自己負担金がいくらかかかるでしょうし、被害が基準以下だったり床下浸水だったときなどは保証が効きません。
コスト増
ハザードマップの浸水深さに応じて保険料を設定している住宅向けの火災保険なども登場しています。数年前までは災害リスクで保険料の差が開くということはなかったのですが、昨今のゲリラ豪雨の増加をはじめとする災害状況を踏まえると当然の流れでしょう。
あくまで一例ですが参考までに、新築木造2階建100㎡程度の住宅に水災保証をかけるとざっくり年間2万円くらい高くなるイメージです。
地価下落
・災害リスクによる不動産評価制度の導入
一般的には災害リスクは不動産価格に織り込まれていません。
しかしこれは、消費者である私たちが災害リスクを認識していないことや、災害リスクに応じた評価額決定が困難なのが理由です。
すなわち災害リスクを多くの買い手が意識して不動産を選んだり、AIなどによる技術革新で災害リスクの評価方法が確立されてしまった際には高リスク物件は価格が急落する可能性があるということです。
また、現時点でも実際に全国的な報道があると価格は急落します。
・実際に被害を受けると価格が急落
18年の梅雨時期にあった西日本豪雨の被害域である岡山の真備町というところでは災害前後で地価が全国で最大の下落率を記録しています。
地域相場よりも4割近く安くなったこともあり安さを理由に移住してくる人もいたようですが、災害前にこういった土地を選ぶのは通常避けるべきです。
・住宅ローンの審査基準に盛り込まれたら、、
簡単にしか解説しませんが、審査に通る買い手が減れば需要が減少したことになります。それによって売り手が価格を下げる必要が出てくるので、価値が下がるということです。
どうやって水害リスクの高い土地を見つけるのか
どんな手段でその土地に潜む危険性が判断できるのか紹介していきますね!
ハザードマップなどからみつける
これはもうみなさんご存じではないでしょうか。各種災害に対して危険な地域を色覚的に判断できるようにしたものです。
しかしハザードマップには意外と知られていない落とし穴がいくつかあるんです!
・ハザードマップは川の氾濫のだけではない!
ハザードマップと聞いて真っ先にイメージするのが外水氾濫(がいすいはんらん)
「川が氾濫したときにどこが沈むかマップ」だと思ってください。
しかし次のような内水氾濫(ないすいはんらん)
「都市の排水設備が機能しなくなった場合における浸水マップ」を見ることが重要です。
内水氾濫の仕組みについては省略しますが、こちらはいくら高い堤防を作ったところで解消されない問題であり、発生個所も多くなっているのでより重要視する必要があります。
・内水氾濫ハザードマップ:排水が間に合わず浸水してしまう危険性を知るもの
他にも土砂災害・津波・道路交通系のハザードマップなどたくさんあるんです。
そんなときに楽なのが国土交通省が作成した「重ねるハザードマップ」
今までに紹介したハザードマップを重ねてみることが出来る優れモノなのでぜひ使ってみてください!
・ハザードマップは全ての河川について考えられているわけではない
近年の短時間豪雨では、ハザードマップ作成の対象外となっている中小河川でも多くの氾濫が起きています。
つまりハザードマップだけを見て大丈夫と安心しきってしまうのではなく、中小河川が近くにないかなども見ておくとよいでしょう。
今昔マップ
これは明治以降の古地図を現在の地図と見比べながら見ることが出来るツールです。
古い地図を見るときにありがちなのが「これは今のどこを指しているの、?」って現象ですが、これだと現在の地図にカーソルを合わせていると同じ位置が古地図上でも指されるのでとっても便利です!
これで昔の河川の流域や田んぼの有無などをみることができます。
一度でも河川流域等になっていると地盤が緩いこと、標高が低いことは確かなので、こういった地域を避けることは重要だといえます。
神社からみつける
最初に言っておきたいのが、神社があるところ=浸水しないから安心 ではないということ。
神社仏閣は古くからあります。神様を祀るわけですから初めに建てるところは安全そうな場所を選びますよね。そして昔から必要とされてきた施設なので何らかの理由で壊れてもいずれかは再建されます。
その再建の地に選ぶのはより安全そうなところ。
つまり昔からトライ&エラーを繰り返してきた結果今の位置に存在するというわけです。
大学の研究論文にもテーマとしてあり、研究結果として神社立地は災害に対して多くの場合で安全側であると評価されています。
もちろん厳島神社のように水の中なんてこともありますからこれをメインの基準とせず、あくまで1つの指標としてみてください。
町名からみつける
ここでは東京で話を進めますが、大体どこも一緒なので東京の地名がさっぱりな方は下の表まで読み飛ばしてください。
渋谷は名前の通り谷地になっているのですがその周りを取り巻くように青山・代官山とあり、渋谷が谷地であるということが名前から容易に想像がつきます。
さらに渋谷駅周辺の町名に深堀してみると富ヶ谷・鉢山・桜丘・鶯谷・宇田川
少し離れても初台・幡ヶ谷というようにどこが高くてどこが低いのかわかりますよね。
渋谷に限らず、都内では入谷、白山など分かりやすい地名がいくつもありますし、
神田川沿いの中央線の駅なんかは特に顕著で、千駄ヶ谷・信濃町。四ツ谷・市ヶ谷・飯田橋・水道橋・御茶ノ水と低いところの漢字がてんこ盛りです。(シナノの語源を辿るとくぼんだ所という意味がある)
こんな感じで低いところや水が連想される注意すべき地名と漢字をまとめてみました。このような文字の入る地名は注意が必要です。
川辺、河辺、沼袋、大曲、蛇田
・湿地帯を示す地名[草/池/沼]
井草、池田、長沼、溝沼、大潟
・田んぼだったことを示す地名 [新田]
足立区の新田、大田区の武蔵新田
・湿性植物に由来する地名[柳/芦/茅/菅]
青柳、柳原、芦田、芦ヶ久保、茅野、小菅
・湧水を表す地名[泉/井]
小泉、和泉、新井、井の頭
・自然堤防を表す地名[曽根/塚/島/須]
曽根、平塚、三島、須賀
・その他水と関係のある漢字[津/江/浦/谷/洲/亀]
沼津、堀江、松浦、入谷、中洲、亀戸
景色からみつける
実際に町を歩いているとこのような景色を目にしたことはありませんか?
ここは東京都練馬区の田柄川緑道というところです。こういった道の真ん中に緑道があるような地形の多くは下に川が流れています。
実際に目で見える河川を開渠(かいきょ)
このように埋まっているものを暗渠(あんきょ)といいます。
戦後の日本では下水道の整備が急がれたため、上から下へ流れている河川を下水道へ転用することが効率的で進められてきました。同時期に工業廃水の放出によって汚くなった川に蓋をする動きが後押しされたこともあり、中小河川が次々と暗渠となっていったのです。
暗渠があるというのは周囲でそこが最も低い場所ということになる。さらに液状化などの水害リスクもあるのでこういった暗渠を見つけ出し、そこを避けることはリスク回避として有効です。
・水辺があるかも? 暗渠の見つけ方
こういった場所には暗渠があるかも?というサインをまとめてみました!
・普通の舗装路ではなく蓋がしてある道が続いている
・マンホールが列になって続いていたり、やたら苔が生えている
・谷地で道路が流線形になっている
・やたら広い歩道がある
・井戸の形跡がある
実際の手順
たくさん情報として記してきましたが、水害リスクに関して実際に土地条件を絞る手順を箇条書きにするとこんな感じです!
- 重ねるハザードマップを使い、外水・内水氾濫、土砂災害リスクの低いエリアを抽出
- 今昔マップでそのエリアが河川の流域であったり、田んぼや用水路になった過去がないか確認
- 暗渠を探し、なるべく暗渠の近くを避けるようにする
- 水を連想させる地名ではないところを優先的に選択肢として残していく
- 寺社仏閣が多く存在すればなおよし
- できれば雨の日に見に行ってみて冠水等がないか目で確認する
さいごに
水害にあった人の多くは「まさか自分が」「こんなところで」と言っているそうです。今回の記事では水害に強い土地を探す方法について書かせていただきましたが、どのような場所であっても非常食や避難経路の確認といった防災対策は必ず行ってくださいね。
皆さんの安全と安心を心より願っています。
最後まで読んでくださった方、本当に感謝いたします。 それでは、また
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